スーパーの総菜売り場などで何気なく手にする食品パック。裏返して栄養成分を確認することはありませんか?実は、この栄養表示は法律によって明記することが義務付けられています。子どもからお年寄りまで、毎日口にする食べ物が安全に食卓にあがるよう、厳しい検査を経て初めて表示できます。
では、いったいどんな仕組みに支えられているのでしょうか。
そもそも栄養成分表示って何?
食の安全をはかるため、食品表示法は製品に栄養成分表を表示することを義務づけています。表示対象は一般用の加工食品および添加物で、猶予期間を経て2020年4月1日から完全実施に移行しました。もし表示に違反があったり、表示違反に対して出された命令に従わなかった場合には、罰則を科すなどの厳しい措置が規定されています。
表示を行うのは食品関連事業者のうち、表示内容に責任を持っている者、つまり製造者、加工者、販売者、輸入者のいずれかが該当することになります。栄養成分表示というのは、食品表示法に定められている「食品表示基準」の中の一つです。
販売される食品は、すべてこの食品表示基準に基づいて表示されています。必ず表示しなくてはならないと規定されている各種の栄養成分は、エネルギー・たんぱく質・脂質・炭水化物・ナトリウムなどです。このほか、コラーゲン、ポリフェノールといった栄養成分に分類されていない成分を表記する場合にも、栄養成分表の枠外に配置するなど一定のルールで明示しなくてはならないことになっています。
食品表示基準に基づいた表示の狙いは、消費者に食品の安全性を提供することです。一方、どの食品にどんな栄養分が含まれているのかを知ることで、消費者も合理的に食品を選ぶことができるというメリットもあります。
栄養成分表の表示値とは?
食品にどんな栄養素がどのくらい含まれているかを示す表示値には、分析値、計算値、参照値などいくつかの種類があります。分析値とは、公定法(食品表示基準別表第9の第3欄に掲げる方法)を用いて割り出した値です。
自社で分析するほか、食品検査機関に依頼して分析してもらうこともあります。次に計算値ですが、これは日本食品標準成分表や原料製造者から提供されたデータなど、公的なデータベースをもとに原料の栄養成分値を割り出して算出する値です。
参照値とは、公的なデータベース等を下敷きに、表示したい食品と同じかあるいは類似する食品から類推して出した値のことです。これら分析値、計算値、参照値をあわせて割り出した併用値を使用する場合もあります。栄養成分表を見ても、「これは推定値です」や「この表示は目安です」といった表記を目にすることはないでしょう。
というのも、表示値には許容された一定の範囲内であれば、例えその表示値が実際に分析して抽出していない計算上の値であったとしても、推定や目安の値であるなどと断る必要はないというルールがあるからです。ただし、その場合でも賞味(消費)期限内でどの商品をとっても、表示値の許容差の範囲内でなくてはならないという決まりはあります。
栄養分析表の表示には決まりがあるの?
栄養成分表は表示方法が厳密に定められています。商品を購入する人が読みやすい内容で表現することはもちろんですが、表記自体も邦文であることが規定されています。邦文は原則として漢字、ひらがな、カタカナ、アラビア数字を使用することとされています。
表示する箇所にも決まりがあります。消費者が容器包装を開かなくても簡単に確認できるように、見やすい箇所に表示することが大原則です。小売りで容器包装がないという場合はその包装紙に表示します。食品によっては定期購入などを前提として、同じ商品を同じ購入者に販売するというケースもあります。
そのため、包装容器にはいちいち表示しないということもありますが、栄養成分の量や熱量等の必要な表示は販売パンフレットなど、購入者に提供される文書に明記されていなくてはなりません。表示する色も何でもいいというわけではありません。
分析表に用いる文字や枠の色は背景の色と対照的な色としなくてはならない、という決まりがあります。また、使用する文字そのものについても細かく決められており、一定の条件の下で許容された小型の商品などを除き、日本産業規格Z8305(1962)に規定する8ポイントの活字以上の大きさを使うことが定められています。
栄養成分の検査はどこに頼む?
栄養成分を検査することができるのは、大きく分けて公的機関と民間検査機関の2箇所です。まず公的機関として、工業試験場があります。工業試験場とは工業に関する研究を行う日本の機関で、独立行政法人や都道府県、大学の工学部などが設置しています。
もう一つは民間の検査機関です。主に厚生労働省が認可した登録検査機関が挙げられます。登録検査機関とは、政府の代行機関として業務規程の認可を受けた製品検査を行うことができる検査機関のことで、令和3年現在、全国に100を超える施設があります。
これらの検査機関は民間企業からの依頼を受け、各種食品の分析等を行い、その結果を成績書にまとめて企業に発行します。これを受けて、各企業は自社の食品栄養成分の表示内容を決定しています。
栄養成分表の上手な使い方は?
せっかく表示されている栄養成分表を生活の中に上手に取り入れたいものです。栄養成分表の中には、体に欠かせない5つの栄養素は必ず表示することになっています。その栄養素とはエネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムです。
これらは健康を維持するために大切な栄養素ですが、エネルギーや脂質、炭水化物、ナトリウムなど取りすぎにも注意が必要なものもあります。特に脂質や炭水化物は摂りすぎると肥満や心疾患のリスクを高めます。同様に、ナトリウムの摂取過多も高血圧や胃がんなどの原因につながることがあります。
適切なBMIを維持できるエネルギーの摂取量を意識し、十分なたんぱく質を摂るよう、栄養成分表を参考に食生活を見直すのも良いでしょう。
食の安全に欠かせない栄養成分表示は生活の中で上手に活用を
健康づくりの第一歩は食生活からです。そのために必要なあらゆる食品情報をコンパクトに示したのが栄養成分表です。表示については細かな基準が設けられており、定められた条件を十分に満たすことで初めて表示が可能になります。
厳しい検査のもと、正確に分析されたこの有益なデータを生活の中にうまく取り入れて、元気な毎日を過ごしていきましょう。