食品の栄養分析に関する表示について

市販されている食品のほとんどには、栄養分析で判明した様々な含有成分の割合が表示されています。食品の摂取と体調管理は密接な関係にあることから、含有成分を正しく把握することが必須です。栄養分析の表示は、自分の体の具合に適した食品を正しく選ぶ際に役立つと言えるでしょう。

ここでは、日本における栄養分析の表示の概要や正しい読み方についてご紹介します。

食品の栄養分析表を表示するには検査が必要

工業規格の一種である栄養表示基準

日本で販売されている食品は生鮮食品を除き、含有成分が表示されています。これは厚生労働省が2003年に出した告示に基づくもので、摂取する栄養の過不足予防を目的とした工業規格です。栄養表示基準が定められた理由として、それ以前の表示内容があいまいだったことが挙げられます。

「塩分ひかえめ」「食物繊維たっぷり」など、特定の成分の含有量を抽象的に強調するものが多く、数値による客観的な表示が行われていないのが実状でした。ひかえめやたっぷりなどの言い回しは公的な基準が存在せず、消費者の誤解を招くおそれがあったことから栄養表示基準が定められることになりました。

健康増進法で定める栄養成分については必ず表示する必要があります。表示する順番も熱量、たんぱく質の量、脂質の量、炭水化物の量、ナトリウムの量と定められています。これ以外の成分を記載するのは任意ですが、特定の成分の割合が高い、または低い旨を記載する場合は食品の形状や100キロカロリー当たりの量に応じてという規制が設けられています。

また、含有成分を0と記載するのはそれぞれの食品や栄養成分ごとに定められた規制値より少ないことが条件になっています。そのため、規制値よりも少ない量なら含まれていても0と記載することは可能です。一方で、アルコールは別格であり、微量でも含まれている物をノンアルコールと記載するのは不当景品類及び不当表示防止法に抵触すると解釈されます。

栄養表示が求められた経緯として、安全への意識の高まりや偽装表示の問題も挙げられます。食品加工の技術が進歩すると共に様々な食材が活用されるようになりましたが、一方で利益を重視するあまり、質の低い食材を使うケースも増加しました。

色合いや艶を良くする目的で人体に悪影響のある薬剤を使うケースもあったことから、毎日の食事を安全に楽しみたいと考える人が増加しました。消費期限や産地を偽装する問題も過剰な利益重視の姿勢から生じたと言えるでしょう。

このような問題の発生を未然に防ぐ意味でも、食品の栄養表示は欠かせないと言えます。

栄養分析の方法

対象の食品にどのような栄養がどれだけ含まれているかを調べるには様々な方法があります。栄養成分によって適した分析方法は異なりますが、脂質の場合はエーテル抽出法、クロロホルム・メタノール混液抽出法、ゲルベル法、酸分解法、レーゼゴットリーブ法の5種類があります。

複数の方法があるのは食品ごとに適した方法が異なるためです。また、同じ食品、同じ分析方法でもわずかに数値の違いが生じるため、通常は複数回の分析を行い、その平均値を算出して分析結果と見做します。栄養分析は専門の設備と高度な技術が必須な作業になるため、食品メーカーの多くは専門の業者に代行を依頼しています。

栄養表示の読み方に関する注意点

体調管理に気を配る人や特定の栄養の摂取を控えている人にとって、食品の栄養表示は重要な確認事項と言えるでしょう。風味の好き嫌いだけで食品を選ぶと重大な健康被害に見舞われる可能性があることから、体調を良好に保つためにも栄養表示の確認は欠かせません。

しかし、単に数値だけを見るのではなく、その成分を的確に摂取できることを確認する必要があります。また、カロリーの数値を気にする人は少なくありませんが、数値が少なければ健康的とは言い切れないのも事実です。カロリーとは熱量を意味する単位ですが、数値の高さと人体への影響は必ずしも比例するとは限りません。

同じ数値のカロリーでも、食品ごとに消費できる割合が異なります。そのため、体重や血糖値、血圧などの数値が気になる人はカロリーの意味や食品ごとに異なる消費の割合を正しく理解することが重要と言えるでしょう。

輸入された食品の栄養分析

輸送技術の進歩により、日本から遠く離れた外国で作られた食品が輸入されるようになっています。食品の輸入については食品衛生法に基づき、検疫所に届出を行わなければいけません。検疫所では輸入食品の安全性について調べますが、栄養分析には関与していません。

栄養分析は製造や輸入に携わった業者の責任で行うことになります。栄養表示基準は日本で定められたものに準拠するため、製造国で分析を行う際は注意が必要です。

食品を安全に扱うポイント

食品を正しく扱うのは風味を損なわない他、安全性を保つ意味もあります。扱い方を誤ると鮮度が著しく低下し、カビの発生や害虫による食害、腐敗などによって安全性も損なわれてしまいます。食品のほとんどは容器に密閉されていますが、開封した場合は基本的に冷蔵庫に保管し、できるだけ早く使い切ることが大切です。

開封することで空気に触れ、そこから次第に劣化するためです。常温での保管が可能な食品も開封すると要冷蔵になるケースは少なくありませんので、注意する必要があります。冷凍食品も開封すると次第に品質が落ちるため、早めに使い切るのが美味しく食べるコツです。

干物など乾燥した食品は冷蔵庫に入れると他の食品の水分で湿ってしまうことがありますので、容器に入れるなどの工夫が必要です。どのような食品も素手で触らないことを心がけましょう。人の手は見た目は綺麗でも、実際は様々な細菌が付着している不潔な状態です。

一部分に指先が触れただけでもそこから細菌が増殖し、短時間で食品全体が汚染される可能性も否定できません。食中毒の原因にもなることから、どのような理由であっても素手で触らない、口をつけた物を一緒に保管しないなど衛生管理の徹底を心がけましょう。

他の食品に触れた部分から汚染されるケースもありますので、袋や容器などに入れて接触させないことが大切です。

栄養分析は食の安全性と繋がりがある

栄養分析は単に食品の栄養の割合を調査するだけではなく、食の安全性にも深く関わっている作業です。どのような栄養がどれだけ含まれているかを正しく把握しなければ、健やかな生活を営むことはできません。毎日の食事を美味しく、かつ安全に楽しむには栄養を過不足なく摂取する必要があります。

そのためにも、正確な数値を算出できる栄養分析は必要な作業です。

詳細|栄養分析 … キューサイ分析研究所 - 栄養分析、残留農薬検査、農薬・食品分析、食品検査 - キューサイ分析研究所(QKEN) | 栄養成分検査 | 検査項目